みなさん、こんにちは。
室見校の中村です。

今日は演奏における「テクニックの選択」というテーマでお話します。

テクニックは適材適所

目の前に1本のネジとドライバーがあるとします。
そして考えうるネジとドライバーの組み合わせは

  1. プラス×プラス
  2. プラス×マイナス
  3. マイナス×プラス
  4. マイナス×マイナス

の4種類。
ここでこの4種類の組み合わせはある3つに区分することができます。

  1. すんなりネジを締められる組み合わせ(a, d)
  2. 不便だけどなんとかネジを締められる組み合わせ (b)
  3. どう頑張ってもネジを締められない組み合わせ (c)

このように使うべき道具がふさわしくない場合、目的を達成しにくいどころか、絶対に達成できないことがあるわけです。

これは全く同じことが演奏にも言えます。

極端な例を挙げると、手のひらをぺったり、指の腹で弾く方法でモーツァルトのトルコ行進曲やショパンの革命を弾く。
これはもはや不可能の域ではないかと思います。
動きが細かくテンポも速い曲を弾くためには、指を早く離鍵できるように手首や指の第3関節などで支えを作り、手全体に高さを持たせる必要があります。

おそらくここまでの例だと、少し試してみればすぐに理解していただけるのではないかと思います。

ではより高度な領域でタッチについてはどうでしょうか?

ドビュッシーの「月の光」のような柔らかい音を作るのに適したタッチ、バッハの「トッカータ」に求められる技巧的、機械的(器楽的)な響きを作るのに適したタッチ、またはロマン派の多くの楽曲に必要な流線的で滑らかなレガートを作るのに適したタッチ、などなど。トッカータのタッチで月の光を弾くことも、その逆もまた演奏において多くの矛盾や困難を引き起こすこととなるでしょう。

テクニックとタッチは適材適所です。

タッチの種類は無限大です。
また、タッチとテクニックは直接的に関係があるので、適切なタッチを選ぶことでテクニック的にも楽に感じられることは多々あります。
そしてタッチは音色にも影響するため、自分が出したい音色に合わせてタッチを選択することが不可欠になってきます。

テクニック的にうまく弾けない時、または弾けてるんだけど何となく違うと感じるとき、自分が用いているテクニックやタッチを見直してみるのも解決策を導き出す良い発想ではないかと思います。