こんにちは、名島校の折居です。

今日はスクリャービンの練習曲Op42-5 嬰ハ短調という曲について書いていこうかと思います。
僕が初めてこの曲を聴いたのは高校2年生の夏。
当時クラシック音楽にドンドンのめり込んでいった時期でこの頃からをクラヲタまっしぐらになっていったわけですが、最初に聴いた時の全身を駆け巡る衝撃は今でも忘れられません笑

スクリャービンはラフマニノフと同じロシア人作曲家で同じ学舎(モスクワ音楽院)で当時バチバチに意識し合っていた人物で、大柄なラフマニノフに対して小柄で手も小さいのが少々コンプレックスとなっていた作曲家です。
今現在でもコアなファンに熱狂的な人気を誇る彼ですが、当時学舎内での成績は常に2番手でした。

そう、理由は明快ですね。ラフマニノフが隣にいたからです。
あまりにもラフマニノフが優秀であったため、隣にいたスクリャービンはその才能を100%評価されなかった事で劣等感や元々気難しかった性格は更に歪んでいきます。

学舎を卒業後、ラフマニノフはロシア音楽の王道として、スクリャービンは自己の内面と向き合い、神秘和音、神秘主義という新しい世界を構築して行ったのです。
また、ある演奏会ではラフマニノフは指揮を、スクリャービンはピアノをという夢の共演をしますが、今回はそのお話は省略します。

さてそんな小柄なスクリャービンが作った練習曲集、Op8とOp42は有名ですが、これが圧倒的ヴィルトゥオーゾな作品で演奏するだけでも難関な曲集となります。
その中でも比較的有名な曲がこのタイトルにあるOp42-5です。

冒頭、暗い雰囲気で左手は絶え間なく動き右手は鬱々としたメロディを歌っていきます。
このフレーズはトータルで3回歌われるのですが、2回目、3回目とどんどん病的で美しく荒々しく昇華していきます。
中盤に歌われる右手メロディ(第2主題)はなんとも鬱屈として儚い、そして美しいメロディです。
このメロディが綺麗すぎて当時の僕は中毒的にこの曲、スクリャービンという作曲家にハマっていきました。
近年ではヴィルトゥオーゾ系ピアニストのアンコールピースとして非常に人気の高い作品となってます。

色んな名演があるので色々調べてぜひスクリャービン沼にハマって欲しいのですが、この曲の掴みはやはり20世紀の大ピアニスト ウラディーミル・ホロヴィッツの演奏です。
この人の演奏は究極の逸品と言っても差し支えないものですが、特に強いのはppの綺麗さ。
爆音の低音や指周りはもちろん、途端にくる反則的なppの美しさと歌い上げが彼の魅力だと僕は思います。
他にもソコロフ、キーシン、ソフロニツキーなども名演です。